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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3901号 判決 1950年3月16日

被告人

寺岡久一

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人鈴木正一の控訴趣意第一点について。

被告人に対する原判示(二)の事実は、被告人は昭和二十四年二月中旬被告人方で窃盜犯人板倉道之助から、同人および浜本保両名が他から盜んで來た映写機一台をその贓物であることを知つて右板倉に金三千円を貸与へてその抵当として受取り以て贓物の故買をした。というのであつて、この点に対応する公訴事実は昭和二十四年八月二十九日附本件起訴状記載の公訴事実中被告人に対する部分の(二)の事実即ち、被告人が浜本保から映写機一台を二万円で買受けて贓物故買をした、というのであるが、原審公判調書(記録三六丁)によると、檢察官は右二の贓物故買の事実を贓物牙保(刑法第二百五十六條第二項)と予備的に訴因及罰條を追加する旨の記載があり、この予備的訴因追加の対象たる事実は原審公判廷における被告人の供述中(記録三〇丁裏)「映写機は浜本と板谷が二人で窃取して來た物で、板谷が私の所に映写機を持つて來て浜本と一諸に盜んだのだが浜本はこれが売れるかどうか判らないので金はいらんと言つているから、これで三千円貸して呉れと言つたので、私は金三千円を板谷に貸し、その抵当として映寫機を預かつたのです」の事実を指したものと認められ、これに基いて原審が前示のごとく事実を認定したものであつて、所論の訴因の変更もないのに起訴事実と別異の事実を認定したとの論難は当らない。

(イ)もつとも檢察官は右予備的訴因の追加について贓物牙保と法律上の判断を示しているが、これは檢察官の法律上の判断であつて、その基本たる事実は前示のとおりであるから裁判所はこの判断に捉われるべきではない。

(ロ)また、原判決はこの点について貸金の抵当として贓物を受取つた、と認定しながら、これを贓物寄藏とせずして贓物故買としたことは明かに法律上の判断の過誤と言わねばならない。しかし、贓物の寄藏と判断すると贓物の故買と判断するとによつて罰條に差異はなく、等しく刑法第二百五十六條第二項を適用すべきであるからこの点においてその誤が判決に影響を及ぼすものとは言えない。要するにこの点の論旨も採用し得ない。

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